病院での挙式(結婚式のタイミング②)

2019/01/22

おはようございます。

 結婚式司会30日トレーナー、代表講師の広瀬正明です。

前回の「結婚のタイミング」に続き、今回はある実話をご紹介します。

 

病院での挙式についてのお話です。

  


 あるカップルの新郎から、電話相談がありました。

『新婦の父親が入院中で、教会まで行けないので、父のために病院で挙式を挙げたいけど、そちらの会社では、協力出来ますか?』との内容でした。

 披露宴はなしの挙式だけ。しかも、挙式場所が病院という事で、他のプロデュース会社からは仕事依頼を全て断られたそうです。

 そう聞くと、本来の義侠心が騒ぎだし、「大丈夫です。お手伝い出来ます。」と答えていました。

 後日お会いすると、新婦の父親は埼玉の病院に入院中で、新婦が院長先生に事情をお話したら、会議室を、挙式用に特別に貸して頂だけるとの事でした。

 挙式の日程は、今は夏の6月だけど、新婦の希望で、来年の桜満開の春3月か4月頃が良いとの事。


その1週間後、私は、アシスタントのウェディングプランナーと一緒に病院を訪ねました。

新郎新婦と共に、病院の院長先生、主治医、看護師さんの不安そうな表情の中、「こんな病院の会議室で、結婚式なんて出来るんでしょうか?」と尋ねられました。

「大丈夫です。そこはプロですから、素敵な式場になりますよ。」 と答える。 新婦のお父様にご挨拶をと思い病室を訪ねと、今日は体調が悪いから話せないと新婦に言われました。

少し覗いてみると、酸素マスクをつけて、息苦しそうにベッドに横たわっておられました。

 ご挨拶も出来ないまま病院を後にしました。


2回目の打ち合わせの時、初めて、新婦のお父様の病名が「がん」だということを聞きました。

 私は、即座に、「挙式は3ヵ月以内に早めて下さい」と言いました。

 しかし、新婦は、病院の主治医から「頑張れば1年ぐらいは大丈夫です。」と言われているとのこと。

新婦のお父様も、「娘の希望である来年、春の桜満開の3月に、結婚式で最愛の娘の腕をとり仲良く入場したい。」と強く望んでおられるとのことでした。

 それを聞くと、私は、もう何も言えなくなってしまいました。


その後も、新郎新婦とは、2週間に一度づつ連絡を取り合っていました。


 暑い夏が終わり、秋の9月頃、お父様の状態が良く、起き上がって散歩に行かれるくらい元気になられた。との連絡がありました。

 『希望があるというのは、人に強い生命力を喚起させるんだな』と改めて思いました。

ひょっとすると奇跡が起きて病気が治るかもしれないとも思いました。


 しかし、10月に入るとお父様の状態が再び悪くなり、酸素マスクをつけ寝たきりとなってしまいました。

私は、何か気になり「新婦にウェディングドレスが決まったら、お父様に見せてあげたら?」と提案しました。

また、「やはり年内に挙式を早めましょう。少しでもお父様が元気な時に挙げましょう。」とも語気を強めてアドバイスしました。

そのすぐ後に、「アドバイス通り少し早めて、11月の2週目の日曜日に挙式致します。」と新婦から連絡がありました。


その後、お父様の様態は、元気になったり、寝たきりになったりと、日々、一進一退を繰り返しました。

新婦から、「挙式の時、もう歩けないかもしれないから、車イスでの入場でもいいですか?」と聞かれ、「もちろん、大丈夫ですよ。」と答える。


 11月初め、新婦から弾むような声で「今日、病室で着替えて、私のウェディングドレス姿をお父さんにみてもらいました。

ベッドに横たわりながらも、うれしそうに『きれいだね。』と言って、とっても喜んでくれました。」と、本当にうれしそうに連絡してくれました。


私は、もう、社員達と共に祈るような気持ちで、『挙式を無事に迎えられますように』と切に願っていました。


そして、やっと挙式1週間前の打ち合わせを済ませることができました。

 しかし、その頃には、お父様は車イスにも乗れないくらいになっていました。

 そのため、お父様はベッドを挙式場の片隅におき、そこから、娘の入場を見ることになりました。

入場は、院長先生の協力で一緒に入場してもらえることになりました。


 挙式の3日前の朝、私は『挙式の準備も全て整えた』との報告をアシスタントから受けていました。

その時、一本の電話がかかってきました。

新郎からの電話で、何か気恥ずかしそうな声で、「すみません、先程、お父さんが亡くなりました。」と言われた。

 「そうですか。」と言って絶句しました。

 暫くしてから、「新婦はどうされていますか?」と聞くと、「すみません、泣いていて...、泣きじゃくっていて、電話に出られない状態なので...」

「わかりました。こちらの方は大丈夫ですから、どうぞ新婦にしっかりと寄り添っていて下さい。」と伝えるのでが精いっぱいでした。

その後、社員のプランナー達に話すと、既に察していたのか、目を真っ赤にして嗚咽しながら泣いていました。



 残念だった。 間に合わなかった。

もう少し、挙式のタイミングが早ければ。もっと強く言うべきだったかな。

 重い後悔だけが残りました。



ただ、お父様が亡くなられる前に、新婦のウェディングドレス姿を見せてあげられた事だけが救いでした。  


以上、「結婚のタイミング」についてのエピソードでした。最後まで読んでいただきありがとうございました。


青葉ブライダルスクール 代表講師 広瀬 正明


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